すでにご存知の方も多いでしょうが、「第3次男女共同参画基本計画(中間整理)」にて、児童ポルノ禁止法などによるマンガやアニメ、ゲームなどへの規制の提案が盛り込まれています。
「第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」について
より抜粋
・第8分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶
P38
③ 児童ポルノの根絶に向けて、(略)児童ポルノ法の見直しや写真・映像と同程度に写実的な漫画・コンピュータグラフィックスによるものの規制の在り方について検討する。
P40
8 メディアにおける性・暴力表現への対応
(2) 具体的な取組
④ メディア産業の性・暴力表現の規制に係る自主的取組の促進、DVDやビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野における性・暴力表現の規制を含めた対策の在り方を検討する。
・第12分野「メディアにおける男女共同参画の推進」
P52
Ⅱ 今後の目標
また、女性や子どもをもっぱら性的ないしは暴力行為の対象としたメディアの表現は、それ自体が「人権侵害」であるという観点から啓発を行うとともに、メディア側の自主規制等の対策を働きかける。
P53
⑤ メディア業界の性・暴力表現の規制に係る自主的取組の促進やDVDやビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野における性・暴力表現の規制を含めた対策の在り方を検討する。
今回の第3次男女共同参画基本計画の特徴は、「できる限り具体的な数値目標やスケジュールを明確に設定した上で、その達成状況について定期的にフォローアップを行う」とあり、実効性に重きを置いている点です。(第1部基本的考え方 P2)
これが閣議決定されると今後、国を挙げての規制への動きが加速し、非常に問題だと思われます。
現在パブリックコメントが募集されており、意見を送ることが重要でしょう。
送り先:
「第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」に関する意見募集について
2.意見募集期間(意見募集開始日及び終了日)
平成22年4月16日(金)~平成22年5月12日(水)
・「II-8.女性に対するあらゆる暴力の根絶」意見募集メールフォーム
・「II-12. メディアにおける男女共同参画の推進」意見募集メールフォーム
なお女性差別撤廃条約には、北京宣言及び北京行動綱領の遵守が求められており、仮にメディアを規制するにしても、「表現の自由に矛盾しない範囲内で」、という条件がついています。
したがってメディア規制法を本計画に盛り込むのは、この行動要綱違反に当たります。
第3次男女共同参画基本計画においても、北京行動綱領の遵守が盛り込まれています。
・女子差別撤廃委員会(CEDAW)第44回の最終報告より抜粋
北京宣言及び行動綱領
55. 委員会は加盟国に対し、本条約における 義務の履行に際し、本条約の規定を補強する北京宣言 及び行動綱領を引き続き利用することを強く勧める。
また、委員会は加盟国に対し、次回の報告書に直ちに 情報を含めるよう要請する。
・第14 分野「国際規範の尊重と国際社会の『平等・開発・平和』への貢献」
施策の基本的方向と具体的な取組
1 国際的協調:条約等の積極的遵守・国内施策における実行・国内への周知
(1) 施策の基本的方向
今後とも、女子差別撤廃条約を始めとする男女共同参画に関連の深い各種条約、「北京宣言及び北京行動綱領」(略)、女性の地位向上のための国際規範・基準を周知徹底するとともに、積極的に国内施策において実行するよう努める。
その北京宣言動綱領は以下の通り。
北京宣言行動綱領 第Ⅳ章 戦略目標及び行動
戦略目標J.1.
「メディア及び新たな通信技術における,またそれらを通じた表現及び意思決定への女性の参加とアクセスを高めること」
取るべき行動
240. 国内及び国際メディア・システムにより:
メディア及び国際的通信システムによるバランスのとれた多様な女性描写を促進し,製作及び意思決定への女性及び男性の一層の参加を促進する,自主規制を含む規制の仕組みを,表現の自由と矛盾しない範囲で開発すること。
戦略目標J.2.
「メディアにおけるバランスがとれ,固定観念にとらわれない女性の描写を促進すること」
取るべき行動
243. 表現の自由に矛盾しない範囲で,政府及び国際機関により:
(f) メディアにおけるポルノグラフィ及び女性や子どもへの暴力の描写に対し,適切な立法を含め,効果的な施策を講じ,又はそのような施策を開始すること。
244. マスメディア及び広告機関により:
(a) 固定観念にとらわれない女性像の描写を促進するために,表現の自由に矛盾しない範囲で,職業上の指針及び行動規範その他の形の自主規制を開発すること。
(b) 広告を含むメディアにおける女性関連の暴力的,屈辱的又はポルノグラフィ的な題材に対処する職業上の指針及び行動規範を,表現の自由に矛盾しない範囲で設けること。
参考リンク:
弁護士山口貴士大いに語る
「『第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)』に対するパブリックコメント」